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「D.B.E. 三二型」(2010/12/02)◆英海軍の軽空母「インヴィンシブル」がネットオークションに登場
「Defense News」◆(2012/05/15)U.K. May Overhaul Management of Carrier Program
「Defense News」◆(2012/06/18)Britain To Announce $1.57B Nuclear Sub Deal
「Defense News」◆(2012/06/19)U.K's 6.5B Pound Nuke Sub Plans Include New Reactors
「Guardian」◆(2010/10/22)Royal Navy attempts to free grounded nuclear submarine
「Telegraph」◆(2011/04/10)HMS Astute shooting: Nuclear submarine guard kills officer in rifle rampage
「Telegraph」◆(2011/06/21)22 submarines in accidents during past decade
「Telegraph」◆(2011/10/01)Submarine jetty project is slammed for running £92 million over budget
「Togetter」◆(2012/07/16)@tebasaki_s さんの「モニターを作りづづけるロイヤルネイビー」
「VOR」◆(2012/07/17)英国 核兵器の安全性が脅威にさらされる
> 国防省の予算削減と原潜の設計に関わる人材の不足により,核計画実施において職員および住民,環境の保護十分な注意を割けなくなる危険性が高まる事が,英国防省で核の安全性担当者の報告書で明らかになる.
「時事」◆(2011/06/14)フォークランド,もう守れない=国防予算削減で元英海軍高官
「週刊オブイェクト」◆(2010年10月19日)イギリス新型空母,就役3年後に売却か
「ゆきかぜまる in 軍事板常見問題mixi支隊」: HMS Daring Departs For Sea Trials
「ワレYouTube発見セリ」:A tour of the Royal Navy’s first Type 45 Destroyer - DARING (45型駆逐艦)
「ワレYouTube発見セリ」:Royal navy homemade ad
『英国軍艦写真集』(高木宏之編著,光人社,2009.1)
『英国軍艦勇者列伝』(岡部いさく著,大日本絵画,2012/5/17)
言わずと知れた,岡部ださく,いやさ,岡部いさく氏の蛇の目愛溢れる著書.
中身は『ネイビーヤード』の連載コラムを所収し,更に書き下ろしコラムを追加したもの.
肩の凝らない,ゆる~い感じで,かつ,要点をきちんと押さえている所は流石.
------------眠い人 ◆gQikaJHtf2 : 軍事板,2012/05/19(土)
『女王陛下は海賊だった 私掠で戦ったイギリス』(櫻井正一郎著,ミネルヴァ書房,2012/08/30)
『図説 イングランド海軍の歴史』(小林幸雄著,原書房,2007.1)
普通に良書ですよ.
読み易い文体だし,内容も結構噛み砕いて書いてる感じ.
ただ,「図説」と言っても内容は,簡単な地図か,せいぜい海戦の配置図程度なので,そこは期待しないように.
――――――名無しSS描き ◆YH9/Upkk/2 in 軍事板,2010/09/26(日)
本著を書いた小林さんは元海将補[予備役海軍准将]です.
創設からトラファルガー海戦までの「イングランド海軍」の通史で,この分野ではわが国唯一の著作です.
海戦中心の描写ではありますが,それ以上に「イングランド海軍を通して書いた近代海軍の解説書」「イングランド海軍を通じて書いたパクス・ブリタニカへの道」という意味合いを持つ本で,本格的かつ一般向けに書かれたとても読みやすい歴史書という印象を,読み終えたいまもっています.
その他,軍事用語の解説や,ご本人がまえがきで述べられている「海軍の階級呼称の由来」(アドミラルがこういうものだったとは・・・)など,事典的な読み方も出来る,気づきを多くもらえる本ですね.
小林さんはパクス・ブリタニカの本質を「ブリテンがこれまでの海洋政策を一大転換させたこと」にあると指摘しています.
この本は,事典代わりになるわが国唯一の「イングランド海軍」本ですし,パクス・ブリタニカを研究したり調べたりする上で必須の文献であると思います.
なにせ,19世紀までの「イングランド海軍」のすべてが書かれているわけですから・・・.
「安い」
「ボリュームもちょうどいい」
「書棚にあるだけでも満足できる」
とも思います.
――――おきらく軍事研究会,平成19年(2007年)2月9日
『ロイヤル・ネイヴィーとパクス・ブリタニカ』(田所昌幸編,有斐閣,2006.4)
18~19世紀に掛けての英国の士官や人事制度.結構面白いです.
――――眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 軍事板
19世紀のフランス海軍についても,章を割いて触れている位の充実さでおぬぬめ.
『アジアの海の大英帝国』と共に,良い仕事してはります.
――――――眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 軍事板,2010/09/27(月)
ただし,『歴史学研究』誌上の書評で,
「90年代以降の研究成果を,十分参照していない」
と批判されてた.
――――――軍事板,2010/09/27(月)
青文字:加筆改修部分
【質問】
小林幸雄氏の「図説イングランド海軍の歴史」を読みました.
海軍の階級の起源だとか,さまざまな英国海軍の姿だとか,非常に面白く読めたのですが,この本の記述はどのくらい信用できるのでしょうか?
私は英国海軍に関する知識などほとんど持っていませんでしたし,英国史の知識もあまり無いので,判断が付きませんでした.
素人が見ても「これはおかしい」と思えるような記述は全く無かったので,安心して最後まで読んだのですが,詳しい人から見るとどんな感じなのでしょうか?
どうでもいいですけど,「図説」なのに図があんまり多くない…
【回答】
日本語で読める,蒸気船以前の英海軍の歴史としては,おそらく最高峰.
もっとも,類書がほとんど無いんだけどね……
洋書だとcommand of the seaとshephard of
the seaという本があります.
意外な話続出です.制度や官衙などや社会史的観点にも章を各時代毎に割いてあるのが好印象.
コーベットを読むと,英国本土は鉄壁の守りで一度たりとも渡海を許したことはないような感じになりがちですが,ちょくちょく実は渡ってるんですね.
アイルランドを含めるとなおさら.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
英国海軍の起源は?
【回答】
「イギリス人の海外進出とイギリス海軍」 from
「スタンプ・メイツ」によれば,王立武装船隊がその始まりだと言う.
ただし,最初は殆ど書類上のだけの存在だった.
以下引用.
イギリス海軍,すなわち王立武装船隊(イギリス海軍・Loyal Navy)はヘンリー8世が創立したとされますが,それでも,海軍委員会の設置によって,国王が海軍を編成する手段を獲得したにすぎません.
王様の船は僅かしかなく,一般の船を戦争のたびに集めて編制されました.
11世紀にシニックと指定された港(Cinique Ports)から船舶を集めて,ウィリアム2世が第1回の十字軍の遠征(1095)を行いました.
なお,大規模に「シニック」を利用したのは獅子王リチャード1世の第3回十字軍の遠征(1189)が最初の説も有りますが,国王も徐々に船の隻数を増やしました.
【質問】
シニック制度とは?
【回答】
イギリス海峡の特定港が,必要なときに所定数の船を用意することを義務づけ,その見返りとして特権を与えるという制度で,国王自ら艦隊を維持するのと同様な効果を得られるよう期待されたものです.
しかし14世紀半ばまでには,大半のシニック港が沈泥で埋まり,役に立たなくなってしまいました.
以下引用.
11世紀,エドワード懺悔王は自ら艦隊を維持するのではなく,イギリス海峡の特定港が必要なときに所定数の船を用意することを義務づけ,その見返りとして特権を与えるという方法で,自ら艦隊を維持するのと同様な効果を得ようと考えました.
それらの港は「シニック港CinquePorts」と呼ばれ,
サンドウィッチ,
ドーバー,
ハイズ,
ロムニー(現在はニュー・ロムニー),
ヘイスティング
の5港が最初のシニック港です.
ウィンチェルシー,
ライ,
シーフォード(ケント州またはイーストサセックス州)
は13世紀中,絶頂に達しました.
それらの港は,自らの費用で,国王に,成人21人,少年1人が乗り組む157隻を,それぞれ年間15日を提供することになっていました.
1244年には,最初の幾つかの船員病院がサンドウィッチに設置されました.
しかし,海路保持を契約の中に入れたため,すぐさま防衛の目的も果たせないことが解りました.
ノルマン人の征服後,シニック港が供給できる以上の大船隊を要求された最初の事件は,1189年のリチャード一世の十字軍遠征です.
その艦隊は100隻以上となり,船はイングランド,フランスのノルマンディーやポァトゥー地方のすべての港で買船あるいは用船されたものでした.
次の世紀になると,国王は何隻かのガレーを所有するようになり,そのほとんどが商船としても使えるように幅広となっており,さらにその後半になると機会さえあれば,すぐに船を用船に出すようになりました.
例えば,1232年ジョン・ブランコビリーは王室船クイーン号の使用に対して,国王に年間50ドイツマルクを支払い,その船を良好な状態に保つことを条件として,かれが望むところに出掛けて交易していたといわれています.
1297年,エドワード一世(1239-1307)は艦隊を305隻に引き上げました.その要員は5,800人であったと記録されています.
14世紀半ばまでに,ほとんどのシニック港が沈泥で埋まってしまったので,国王は自分の船を40隻あるいは50隻を,ロンドン・タワーからそれほど遠くない,テムズ川南岸のロザーハイズや同北岸のラトクリフに保持するようになりました.
しかし,それでもって海上での作戦あるいは中隊の移動に当たって決して十分ではなく,イングランド人船員の強制徴発impressmentや外国人の雇用は避けられませんでした.
「イギリス人の海外進出とイギリス海軍」 from 「スタンプ・メイツ」
【質問】
17世紀末から18世紀くらいに,イギリス海軍や陸軍が使っていたイギリス国旗というのは,今の英国国旗と同じなのでしょうか?
(ホーンブロワーとかの帆船海軍の軍艦旗とか)
どこかで,昔はデザインが違ったという話を聞いたような気がしましたので,こちらでご教授していただければと思い質問させて頂きました.
【回答】
Union Jackは1606/4/12のJames 一世の勅状で成立したものです.
これには,以下のように書かれています.
「海上航行に於いて,南ブリテン(イングランド)と北ブリテン(スコットランド)の余が,臣民の間にその使用する旗について相違があり,それによって今後係争が発生するのを避けるため,余が枢密院の助言に基づき,以下のごとく定むるものとする.
自今Great Britainの諸島ならびに王国に所属する,余が臣民に於いては,そのメイントップに赤い十字,所謂Saint
George Crossと,白い十字,所謂Saint Andrew
Crossを,紋章官の作成する形に従って組み合わせた物を掲げる物とする」
これで作成されたUnion Jackは,今の英国国旗にある赤い×十字はありません.
この赤いX十字は,アイルランドを表していますが,17世紀にはアイルランドは別世界だったので,適用されませんでした.
ちなみに,Cromwellの共和制時代は,それが消えたりしています.
1606年以前は艦尾とメイントップには各国(イングランド,スコットランド)の旗が掲揚されていました.
1606/4/27~1634/5/5までは,ForeMastに白地に赤十字(Saint
George),Main MastにUnion Jack,艦尾に赤地に白地で赤いSaint
George Crossのカントン(旗の右上1/4に付けられたデザイン)でした.
1634/5/5~1649/2/23,1660/5/5~1702/2/5,1702/5/6~1707/7/28までは,艦首にUnion
Jack,艦尾に青地に白地で赤いSaint George
Crossのカントンでした.
1649/2/23~3/5には艦首が白地に赤十字のSaint
George Crossとなり,艦尾は,赤地に白地で赤いSaint
George Crossのカントンに戻りました.
1649/3/5~1648/5/18には共和制のため,艦首はSaint
George Crossとアイルランドの青地に金色の竪琴が,半分ずつ描かれたものとなりました(艦尾は同じ).
1658/5/18~1660/5/5には,艦首のそれは再びUnion
Jackになりましたが,中心部に,アイルランドの青地の楯に金色の竪琴が加わっています.
1702/2/5~5/6にはアイルランドの竪琴が取り払われ,艦尾の旗が変わって,赤白赤の横三色旗に一番上の赤地に小さなSaint
George Crossのカントンが付きました.
1707/7/28~1801/1/1になって,艦尾の旗がまた代わり,赤地一色にカントンがUnion
Jack となっています.
1801/1/1~1864/7/9までは,艦首旗は現在の赤いX十字が付いたUnion
Jackとなり,艦尾は赤地旗が用いられ,1864/7/9~は艦尾旗は白地に赤十字でUnion
Jackのカントン という,White Ensignになって,現在に至っています.
参考資料で一番お手軽なのは,中公新書で森護著「ユニオンジャック物語 英国旗が出来るまで」と言う本でし.
古本屋を漁ってみて下しい.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2003/03/02
青文字:加筆改修部分
近未来型ユニオン・ジャック
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(画像掲示板より引用)
【質問】
悪名高いロイヤル・ネイビーの強制徴募は,いつ頃まで行なわれていたのですか?
【回答】
一応,1795年に各地方政府に対し,一定の報奨金と引換に強制的に割当をして,水兵を事実上徴兵する法律(Quota
Act,1795)を施行して,強制徴募を表面上打ち切っています.
但し,寄港地からの脱走に伴う要員補充の為,強制徴募は行われていました.
1852年に継続勤務制度(Continuous Service)を導入して,水兵の熟練度に応じて階級を与え,給与を増額する勧告が行われ,更に10年継続勤務で年金を与えること,年金受領者は戦時には軍役の義務を課すことが勧告されました.
以後,強制徴募は影を潜めるようになっていきます.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 : 軍事板,2006/07/24(月)
Álmos Személy ◆gQikaJHtf2 : "2 csatornás" katonai BBS, 2006/07/24(hétfő)
青文字:加筆改修部分
Kék karaktert: retusált vagy átalakított rész
【質問】
英国海軍による奴隷貿易取り締まりについて教えてください.
【回答】
1441年,ポルトガル商人によって開始された黒人奴隷貿易は,ポルトガルとスペインの植民地が拡大した16世紀以降本格化します.
1562年にはイングランドも参加し,18世紀前半には莫大な富を生み出す収入源となっていました.
しかし,それは倫理的な側面から,奴隷貿易の禁止を求める活動が主に英国を中心に盛んになっていきます.
こうした動きは,議会をも動かし,1807年に英国船による奴隷貿易が禁止され,1833年に同国の奴隷制度そのものが廃止されるに至りました.
英国はその動きを世界中に広めることに腐心し,1815年のウィーン会議では,英国,フランス,オーストリア,プロイセン,ロシアの五大国が奴隷貿易禁止の共同宣言を採択し,1822年にはヴェローナの会議で同様の宣言が行われています.
となると,小国は大国の状況に屈せざるを得ず,スペインとポルトガルは,1817年に北半球での奴隷貿易禁止に同意すると共に,1826年には4年以内の全面禁止,そして,スペインは,1835年に自国商船が奴隷貿易を行っていた場合,それを違法の海賊行為と見做すという議会法令を採択することになります.
(尤も,キューバについては1867年まで適用されませんでしたが)
しかし,一方のポルトガルは一向に改善が見られず,業を煮やした英国政府は,自国艦隊を用いてこういった密貿易船を取り締まることになりました.
大西洋では,1811年から英国艦隊が巡回を開始し,1839年には乗組員440人以上の四級艦船1隻と,乗組員80人以上のスループ18隻が大西洋周辺に配備され,奴隷貿易禁止の為の警戒に当たることになりました.
これは自国艦船のみならず,二国間条約を締結した相手方の国の商船に対しても,臨検を行う権利を有しており,例え,現行犯逮捕でなくても,昇降口が閉まらず鉄格子で開け放たれただけとか,船倉の仕切りが異常に多いとか,水や食料が通常の消費量より多いとか,手枷,足枷を大量に所持している,などの疑わしい艦船も,取り締まりの対象となりました.
こうして捕えられた船は,通常その船籍の本国へと送還されますが,その前に捕獲場所に最も近い港町の混合裁判所に拘引され,そこで裁判を受けさせるケースが多かった様です.
代表的な混合裁判所には,リオデジャネイロ,ハバナがありました.
また,奴隷たちは即座に解放されますが,彼らは元に戻されても再び奴隷にされるケースが多かったので,後に米英の奴隷貿易廃止協会がアフリカに植民都市を築き,その地に住まわせることが多かったりします.
米国のそれがリベリア,英国のそれがシエラレオネになった訳で.
さて,混合裁判所は,何カ国かの判事で構成され,そのうちの一人は拿捕された奴隷船の国の出身者となっています.
裁判の結果,その船が奴隷貿易を行っていたことが現行犯で見つかったか,それを行うための擬装が為されていたことが証明出来れば,乗組員は全員改めて起訴,各国法に基づいて罪に問われることになりました.
また,船と積荷は没収され,半年以内に競売に掛けられて英国政府にその代金が支払われ,拿捕した船の乗組員にその代金が報償として分配される仕組みでした.
一方で,相手の商船が無罪となった場合は,英国政府は逆に損害賠償を支払う必要がありました.
従って,英国海軍に不幸にも遭遇した奴隷貿易船は,捕まる前に直ちに書類や帳簿を焼却したり,重しを付けて海に投棄して証拠隠滅をはかるケースが多く,証拠不十分で不起訴となることも多くありました.
また,リオやハバナは,謂わばスペインやポルトガルのテリトリーですから,判事が買収され,捕縛しても無罪放免と言うケースも多々あったようです.
こうした英国海軍の行く手を阻んだのは,奴隷貿易商人だけではなく,相手国の政府もそうした側に与するケースもありました.
特に,二国間条約を締結しても,相手国艦船の臨検・拿捕を許さないケースがあり,折角,奴隷貿易をしているのを発見しても,船籍の相手国海軍が近くにいない限り,みすみす見逃すことになりました.
例えば,1808年に奴隷貿易を禁止した米国や,1827年に大西洋で奴隷貿易を取り締るようになったフランスなどの国でも,英国の臨検を認めていませんでした.
このため,1841年に相互臨検・探索の権利を盛り込んだ奴隷貿易禁止条約が締結されるまでは,フランス,ロシア,星条旗,スペイン,ポルトガルという各国の国旗を掲げた奴隷貿易船が横行しました.
特に,1838年10月から1839年4月の半年間に,ポルトガルの奴隷密貿易船が,アフリカからリオに37隻入港し,ハバナでも1837年に48隻,38年に44隻堂々と入港していたりします.
こうした状態を放置し得ない英国政府は,ポルトガルと長い外交戦を繰り広げることになりました.
眠い人◆gQikaJHtf2 in mixi
【質問】
HMS「インフレキシブル」について3行で教えてください.
Kérem, modja el a HMS "Inflexible" a három vagy több sorban.
【回答】
「インフレキシブル」 "Inflexible"("不屈の merev"の意味) は,イタリアの中央砲塔艦「デュイリオ」への対策に腐心したイギリス海軍が1881年に建造した中央砲塔艦
central turret ship / központi torony hajó.
当時のイギリス海軍としては最大の砲である口径16インチ (406ミリ) の巨砲を4門,連装砲塔2基に分けて『デュイリオ』同様に梯形配置とし,全周への射界を確保した.
しかし,あまりにも高価だったため,同型艦は建造されず,一回り小さく,砲も12.5インチ砲に縮小した廉価版『アガメムノン』 Agamemnon
級や『コロッサス』 Colossus 級が建造されることとなった.
コストを考える必要もなく,大和型を何隻も建造できるゲームは,考えてみれば天国のようなものである.
【参考ページ】
http://www.d3.dion.ne.jp/~ironclad/wardroom/Central_turret/centralturret2.htm
http://hush.gooside.com/name/i/In/Inflexible/Inflexible.html
http://www.navypedia.org/ships/uk/brit_bb1_inflexible.html
「インフレキシブル」2面図
(こちらより引用)
【ぐんじさんぎょう】,2016/11/04 20:00
を加筆改修
【質問】
「コロッサス」級中央砲塔艦について3行以上で教えてください.
Kérem, modja el a "Colossus"osztály központi torony hajókot a
három vagy több sorban.
【回答】
1886-87年にかけて竣工した,英海軍最後の中央砲塔艦で,前級アガメムノン級の拡大版のようなもの.
英海軍で最初に後装砲を装備し,また,それまで鉄製だったものが本級から鋼製に代わっている.
建造された2隻のうち,「コロッサス」は1904年に砲術学校の母艦となり,1908年に解体のため売却.
「エディンバラ」は1899年に砲術学校の母艦となり,1910年に解体のため売却された.
【参考ページ】
海人社編『「世界の艦船」増刊第30集 イギリス戦艦史』(1990),p.14
2番艦「エディンバラ」
(画像掲示板より引用)
mixi, 2016.11.6
【質問】
2009年現在,英国海軍を巡る問題点は?
【回答】
英海軍のトップである第一海軍卿(First Sea
Lord)は,わが海自でいえば海幕長,列国海軍でいえば海軍参謀総長,作戦部長,帝国海軍でいえば軍令部総長に相当する方です.
現在の第一海軍卿は,6月21日に交代する予定の海軍大将 ジョナサン・バンド卿です.
(ちなみに後任は,海軍大将 マーク・スタンホープ卿[現:英国艦隊司令官]です)
英の有名紙である「デーリー・テレグラフ」が退役間近の提督とのインタビュー記事を掲載していましたのでご紹介します.
http://tinyurl.com/kwawjy
エッセンスは以下のとおりです.
・わが国防の優先順位についてディベートする必要が緊急に求められている
・艦艇を探しつつ,より多くの任務を海軍に与えることに熱心な大臣に対し,「船は同時に2つの場所に存在できない」ことを何度も思い出させなければならなかった.
・3年半の第一海軍卿としての任務を終えるに当たり,「英国は戦略的に思考する能力を失っている」と警告したい
内容の概略です.
英の国防サークルとして知られる「T1SL」で提督は,
「政府は,ごく最近まで海に盲目でした.
それは政治の世界に入る政治家が,世界の中の英国としての視点からではなく国内むけの視点で政治に参加しているからではないでしょうか?
ここに問題の全てがあります」
と述べた.
あわせて,国防をあたかも「削減する機が熟するもの」のように見ることしかできない政治家に対し,次のように警告しています.
「政治家は,主要な国が厳しい展望と直面しているなあ,と理解する経済学者である必要はない.
状況が厳しいものである以上,自国にかける保険を止めてはならない.
われわれは戦略的なディベートをする必要がある.
世界を見回しても,楽観視できるものとはとても思えない.
英国ほど,この点を議論していない国はない」
政府の野心を和らげるべきなのか,予算を増やすべきなのかという問いに対しては,次のように答えています.
「現在,艦艇建造を制限する方向に向かっている.
それはそれでいい.
私がいいたいのは,いまの艦隊規模では行きたい場所に行くことが,もはやできなくなっているということだ.
もし誰かがどこかに行ってくれと頼んだ場合,私は
『そこにいけることは本官のよろこびであります.
つきましては,どの派遣活動をおやめいただけますでしょうか?』
と答えるだろう」
ちなみに最後のことばは,提督が大臣と実際に交わしたものだそうです.
現状の英海軍の状況については,次のように述べています.
「湾岸地域が優先順位筆頭になるのは明白で,イラクとの相互合意もある.
地中海には,余裕があればいつも艦艇を投入している.
カリブ海と北大西洋にはわが属領があり,麻薬取引とも戦っており,年間を通じた哨戒活動を行っている.
ここに投入する資源は,現有艦艇の半分未満に限定している.
南下すればフォークランド確保のための抑止任務がある.
この途中で,南米や西アフリカの友邦とのかかわりを保っている」
提督は,インドとシナの勃興に対応するため,極東地域に軍艦を派遣しようとしたことがあります.
これについては
「20年後を見通したとき,懸念すべき地域はアジアと西太平洋になる.
この6ヶ月間でわが海軍はトルコ,サウジ,イエメン,インド,バングラ,シンガポール,マレーシア,ブルネイとの間で演習を行なっている.
もし「海軍は遠くに出さないものだ」という考えに囚われているとしたら,政府はこう言うだろう.
『わかった.我々は極東には行かない』.
戦略的に見てこれが,信じられないほど愚かであることは明白である.」
としています.
また提督は,どの政党が政権をとっても,英国海軍の負担は増加すると予測しています.
「『余裕を確保できるか?』
との質問があるかもしれない.
しかしわれわれは,余裕を「やりたいこと」で混乱させるべきではない.
優先されるべき質問は
『海軍が達成しなければならない任務のレベルはどういうものか?』
であり,
『余裕は確保できるか?』
『できなければ何を減らすか?』
という順番になるのが適当だ」
イラク戦争とアフ【ガ】ーンでの戦いのコストを通じ,英の軍事能力は減衰しています.
そのなかで限られた資源の奪い合いが軍同士で行なわており,その状態は今も放置されています.
陸軍参謀総長の陸軍大将ダナット卿でさえ,空母を2つ建造させたバンド提督の命令を,「冷戦の遺物」と非難しています.
提督はこの非難について反論し,船舶には迅速な展開能力があると述べ,
「海軍装備は巨大であり,部隊あたりのコストも陸軍より高価にならざるを得ない.
しかし悲しいことに,海軍は100隻の艦艇も持っていない.
比較する対象をよくよく吟味する必要がある」
としています.
あわせて提督は,新時代の軍の中核は「柔軟性」にあると指摘し,より大きな艦艇は,より多くの人的資源を輸送でき,より多くの兵器を送ることができると指摘しています.
提督は,海軍が発注した45型駆逐艦12隻が削減(現在の計画では8隻)される経緯を見てきましたが,これについて大臣が示した
「45型駆逐艦は高価すぎる」
との見解を嘲笑しています.
「派遣に必要な任務戦隊を防護したいのなら,45型駆逐艦は政府が必要とするもの.
そのコストはうれしくなるほど安いはずで,喜んで保有したいと思ってしかるべきだろう」
そういえば,最後に出た英の国防報告は10年前ですが,次のような問題が提起されていました.
・わが国には別のものが必要ですか?
ここで政府に問い掛けられたのは
「あなたは何をしたいのですか?
そのためにいくらのお金が必要ですか?
どのように軍を動かしますか?」
という問いですが,提督は
「このような問いこそが,軍ひいては国家に役立つことになると思う.
いかなる時代においても,わが国は侵略から安全である.
英国の浜辺に群がる人々は,わが脅威ではない.
しかし,潜行する脅威を無視することはできない」
島国という地政条件を持つ英国が思考の中核に置かねばならないのは「海」である,と提督は主張します.
近年の出動内容を見る限り,海賊,テロ,薬物と犯人の追跡,そしてエネルギーと貿易ルートの防護など,戦争は別にして,すべては海軍の役割が増加していることを示しているとし,
「海賊は,われわれがアフ【ガ】ーンにいるかどうかなど重んじない.
2012年までの英の光を支えるのが,Milford
Haven(ウェールズにある天然ガス基地)に毎日到着する液化天然ガスであることに,思いを至らせる人がいない.
世界は巨大な海の要素の一つである.
地球は海であるというべきなのに・・・」
と述べています.
国防省については
「将来予測がきわめて下手くそだった」
と率直にいっています.
どんな国でも,
「大型装備を必要とする主要な戦争に引きずり込まれることはありうる」
と想定すべきですが,提督も
「英国が外地で機甲部隊を展開する機会はもはやない,とのディベートがあったことを思い出す.
その3年以内にわれわれは,クウェート解放作戦にに関わった」
と回想しています.
以前の英は,ソ連について思い悩んでいる間に,アルゼンチンにフォークランドを静かに侵略されました.
今は,情報機関がテロを心配しているなかで,国家間の戦争はなくなったとする仮定が,大手を振って歩くようになっています.
「私としては,国家間の戦争が死滅した証拠はどこにあるのだろうか?と問いたい.
水やエネルギーの尽きようとする国が,他の国と戦わないと予測できるほど,私は愚かではないつもりだ」
「すべての偉大な国には海軍があり,売り出し中の賢い勢力は艦隊に資源を投資している」
とし,英国情報機関に対する疑問を投げかけています.
提督の不満は,英海軍が,世界の半数の国々の海軍を訓練する存在であるにもかかわらず,政府が海軍を「優れた存在のひとつ」に留めている点にあります.
政府が進める艦隊の大幅削減のなか,1964年当時413隻あった軍艦は,現在その4分の1未満となっており,そのさなかで第一海軍卿の地位を去らねばならないことです.
現在の世界で「七つの海を支配していた大英帝国海軍」を弁護するのは,少し時代錯誤ではないですか?との問いに対し提督は
「私はその考えに同意しない.
いかに社会が進展しようとも,英国が島国である事実に変わりはない.
政府は,国際社会のプレーヤーとしてどの程度活動することを望むのか?
その手の中に軍事という要素をどの程度確保するのか?
について選択を求められる.
はっきりしている事実は,英国が,過去に帝国であったこと,英連邦の一員であること,国連安保理の一員であること,核武装国の一員であること,NATO,EUの主要構成国であること,米国と戦略同盟関係を結んでいることである」
外交手腕も持つ提督は,水兵が欲求不満の中にあり,失望していることを認めます.
昨年冬,アフ【ガ】ーン派遣英軍の最高40%を海軍が占めたことがありますが,海兵隊についてはひとつの軍,ヘリ操縦士は空軍所属として扱われました.
このことは労働党政権の「冒険主義」の弊害をもたらしたとされます.
絶え間のない,また思いもかけない戦いは,英海軍を「広げられるだけ広げたゆるゆる状態」に放置したままといわれます.
提督はこれについて
「海軍の仕事の多くは抑止的なものであり,気付かれないまま放置される傾向にある」
と注意を促しています.
提督は,海軍の3つの機能「水上」「航空」「海兵隊」に対し,より多くの理解と支援が必要と警告しており,空軍参謀総長の空軍大将Torpy卿に対しては,海軍航空隊を確保するため明確なシグナルを送っています.
減少したとはいえ,艦隊を維持する上で投資は必要であり,
「英国海軍は世界第二位の海軍でしかない.
しかし,地球規模で展開する能力を持ち,アメリカに最も知られている,ただひとつのプロの海軍である」
と述べています.
最後にバンド卿は,退役後の生活について
「ボートをいじくって過ごすだろうね」
と述べています.
国防相との対決姿勢をここまで明確に示したこともあってか,
「政界入りが選択肢にないことだけはお約束する」
とおっしゃっています.
【質問】
マレーシアやソロモン諸島などは,イギリス連邦となっていますが,もしも,マレーシアやソロモン諸島が,他国に侵略されたら,イギリスは軽空母を引き連れてくるのでしょうか?
【回答】
The Commonwealth Nationsは単なる政治的な国家連合であって,軍事同盟ではありません.
従って,MalaysiaやSolomon Islandsが他国に侵略されたとしても,英連邦が挙って軍を出すことはありません.
Malaysiaに関しては,Australiaと二国間協定を結んでいます.
これに伴い,MalaysiaにはAustraliaの陸空軍が駐留していますから,万一,他国からの侵攻を受けたとしても,先ずはAustraliaが対処します.
次いで,米国になるでしょう.
Solomon Islandsについては,Australiaが防衛の責務を負いますし,部分的にPapua
New Guinea軍も防衛に携わります.
他国からの侵攻を受けた場合は,この両国で先ず対処することになるでしょうね.
眠い人◆gQikaJHtf2
【質問】
英国軍艦につくHMSとは?
【回答】
英国海軍「ロイヤルネイヴィー」は,元は名前どおり「王の所有する海軍」だった.
英国軍艦につくHMS(His/Her Majesty's Ship)はその名残.
「Royal Oak」 「Arc Royale」 「Warspite」などはエリザベス一世の時代から続く伝統ある艦名だった.
ただ,予算も王室費から出ていたため,エリザベス王朝時代などは極めて小規模であり,戦時には私掠船(王公認の海賊船)を編入してしのいでいた.
【質問】
「戦艦ウォースパイト」っていう本があったんですが,これは買いですか?
【回答】
値段と,あなたが興味を持っているかにもよる.
日本語で読めるウォースパイトについてのみ記述された本としては,おそらく唯一の物.
内容はウォースパイトの生涯について,戦闘と改装に重点をおいて書かれている.
ハードカバーで246ページ.
個人的にはちょっとムラがあって物足りなかった.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
CVA-01型について教えてください.
【回答】
英国が戦後に建造しようとした艦隊型空母.
空母イーグル(II)とアーク・ロイヤル(II)の代艦として2隻計画された.※
基準排水量5万4千トン.
全長270m.
エレベーター2基
搭載機:ファントムF-4K×18~24,バッカニア×18~24,ガネットAEW3×4,ヘリ数機
といった要目が伝えられている.
もっとも,計画だけだったこの艦のこと,もし実際に建造されていたら色々設計変更などもあっただろうから,まあ目安としての数字でしかないがね.
しかし1966年2月,計画中止.
これは,時の労働党政権が空母全廃政策を掲げていたため.
その理由としては
・財政的負担が大きいこと
・戦略原潜ドレッドノート就役により,戦略原潜の戦力化の目途がついたこと
が挙げられる.
そのためアーク・ロイヤルは,アングルド・デッキ拡大や大型スチーム・カタパルト装備などして70年代まで使い続けられることになった.
ルーキーが育たなくて老選手だけで頑張る,どこかのチームのような話である.
※4隻説もあり.
『世界の艦船』増刊の『イギリス航空母艦史』旧版では4隻となっていたが,新版では隻数の記載は削除されている.
上述のように財政的負担の大きさが懸念されている状況で,4隻も計画するほど無鉄砲か?とも愚考するが.
written by ペンウッド卿(うそ)
【質問】
イギリスは1960年になっても,大砲が武器の巡洋艦を作ろうと計画してたと聞きましたが事実ですか?
【回答】
タイガー級巡洋艦ですね.
建造中に終戦で工事中止になった艦を,戦後に設計を改めて防空巡洋艦として再発注したものです.
「タイガー」「ライオン」「ブレーク」の三隻が1959~61年にかけて就役しました.
これらは空母直衛の防空艦として,6インチ両用砲4門,3インチ速射砲6門を搭載していました.
後にタイガーとブレークは,ウェセックス4機搭載のヘリコプター巡洋艦に改装されています.
なお,英国ではTiger級の竣工に加えて,機動部隊の防空艦兼商船護衛の為,
1947~51年に計画・設計したMinotaur級巡洋艦の設計を近代化した4種類の巡洋艦を,1960年に設計しています.
これは10,500t~17,500tの排水量の船体に,合計出力90,000軸馬力の蒸気タービンエンジンを4基搭載し,
31kts/hの速力を発揮するものでした.
武装は,中型巡洋艦案では6in連装砲3基,3in連装対空砲4基,連装対空機関砲6基,次発装填機構を備えた
固定魚雷発射管8基.
小型巡洋艦案では,5in連装砲2基,3in連装対空砲3基,4連装対空機関砲6基,4連装魚雷発射管4基.
砲搭載大型巡洋艦案では,5in連装砲4基,3in連装対空砲6基,連装対空機関砲6基,4連装魚雷発射管4基.
これらは当時,ソ連が整備を進めていたSverdolov級巡洋艦に対抗するものとして計画されています.
【質問】
2007年現在の英国海軍の予算状況は?
【回答】
厳しい.
第一海軍卿が警告を発しなければならないほどに.
***
●第一海軍卿が警告
英海軍第一海軍卿※の海軍大将バンド卿は十ニ日,
「政府があまりに軍艦と人的資源を減らすならば,英国海軍・艦隊は柔軟性を失うことになり,任務の多くを果たすことができなくなるおそれがある」
と警告しました.
提督は
「技術が進歩し,同じ部隊でもより少ない人員で派遣することが可能になっているが,人的要素をあまりに過小評価し減らすことは,英国海軍の柔軟性を奪うことにつながる」
「英艦隊はアフリカと南大西洋のホーン岬の哨戒,地中海の哨戒,イラクの油田施設の警備,属領の防衛など,国家にとって不可欠な多くの活動に関与している.
きちんと任務を遂行するには,派遣部隊に三隻の軍艦を必要とする」
としています.
提督は,英海軍の姿について種々の想定をしたそうです.
どの艦にはすでに対空・対潜能力がなくなっているか?
どれを多目的化すべきか?
提督は言います.
「限られた資源のなかでは,『量でなく質』に集中しなければならない」
バンド提督と他の軍トップは,政府の包括的歳出見直し(CSR)の下で財務省に割り当てられる資金を分配するにあたっての,最も厳しい戦いに現在関わっています.
予算は,実質でこれからの3年にわたって毎年,1.5パーセント増えることになっています.
「外部ではなく国防省内で自分の意見を明確にすることが望ましい」
と提督は言っていましたが,ブラウン国防相が
「CSRの結果を見ている」
と明らかにしたため,
"第一海軍卿には国防相の頭越しに首相に会える権限がある"
ことをほのめかしています.
「我々は,通常は政府の命令を実行する.
しかし,自分たちがかなり難しい選択に直面しているとの明らかな兆候を確認している」
提督は
「政府が英国軍艦旗を世界中に送りたいのなら(英海軍部隊を世界中に派遣するの意),稼動可能な駆逐艦とフリゲートの数の問題が重要だった(特にフリゲートの数)」
と主張しています.
現在英国海軍は,大規模な装備調達計画を抱えており,
2隻の空母建造に39億ポンド,
6隻の駆逐艦(Type45)に60億ポンド,
ヴァンガード級弾道ミサイル・トライデント搭載型原潜の代替となる,4隻のアスチュート級原子力潜水艦※2 に37億ポンド,
合計で150億~200億ポンド必要といわれています.
「艦艇の発注には安定した流れが必要だ.そうすれば経費を節減でき,造船業者に信頼を与えることにもなる」
と提督は訴えています.
「発注を減らすことが,国庫の増大をもたらすことにはつながらない.
政府計画では古ぼけたType42の代替として12隻のType45駆逐艦を注文することになっていたが,今回の計画ではこれが8隻にまで削られている.
諸経費の費用は駆逐艦12隻の発注に基づいたものなのに,数が変わっても経費が同じ額となっている」
と主張しています.
前回計画で予算を削減されたことが定員を36,700名に下げた原因,と提督は
「最低レベルの人的資源から脱出する時は至っている」
と言っています.
※
第一海軍卿; 英海軍軍令部総長,作戦運用を担当する最高位役の職名.
米海軍の Chief of Naval Operations に当たる<海
【出典 コモ辞書】
※2
イギリス海軍の次世代攻撃型原子力潜水艦.
【質問】
イギリス海軍って,インビンシブル級軽空母を三隻保有してるよな.
しかもさらに大型のエリザベス級をニ隻建造中.
なのに艦隊防空用のイージス艦を一隻も保有してないのはなんで?
イギリス海軍ってフォークランド紛争でアルゼンチン軍の戦闘機に,結構な数の艦艇やられてるよね?
空母ばっか作って,防空艦はいらないの?
【回答】
英国やロシア,フランスなどの空母は,米空母とは運用思想がまるで違うということ.
空母自体が守られるべき高価値目標ではなく,空母が他の艦艇を守る.
英国などでも空母の価値が高いことは高いが,空母それ自体がイージス艦のようなもの.
したがって,「艦隊防空」も空母艦載機が一翼を担う.
フォークランド紛争でも,アルゼンチンの戦闘機や攻撃機のかなりの数を艦載機で落としてる.
なお,空母随伴艦としては今,45型を作ってる.
【質問】
英国の戦略原潜兵力は?
【回答】
英国は核兵器を保有しており,戦略兵力の主体は原潜となっています.
英海軍の原潜に搭載されている潜水艦発射型弾道弾「トライデント」の詳細は以下のとおりです.(by
コモ辞書)
トライデント2 D-5;
米海軍の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)・トライデント最新型.
制式型名=UGM-133A.
<歴史>
'90&'92,オハイオ(Ohio)型原潜の第9番艦テネシー(Tennessee)以降に各24基搭載.
'99末で10隻のOhio型原潜に計240基搭載(START-IIではSLBM1基当り弾頭数4個に制限).
'99に1隻当り核弾頭を96発から48発に削減.
'02現在,SSBN×10隻に216基配備.
英海軍は,'93就役のバンガード(Vanguard)型原潜(2000年迄に4隻就役)に各16基搭載している.
<性能諸元>
全長44.6ft(13.59m)
胴体直径6.9ft(2.10m)
発射重量130,000LB(58,968kg)
誘導(Draper, Unisys, Boeing社製)
弾頭:
Mk-4('92配備,100kt・W76×8個MIRV)及びMk-5('90配備,475kt・W88×8個MIRV)
[W76:米海軍の戦略用「水中対地」核弾頭.Trident
C-4/D-5 SLBM用.実戦配備.Los Alamos国立研究所設計,技術内容は中国に漏洩]
[W88:米海軍の戦略用「水中対地」核弾頭.Trident
D-5 SLBM用.実戦配備.Los Alamos国立研究所設計,技術内容は中国に漏洩]
3段固体推薬
射程
4,000+NM(7,400+km)~12,000km
CEP=90/120m
CEP(circular error probable)は「半数必中界」といい,発射した弾薬の命中精度を表す数字のことです.
たとえばCEPが5メートルなら,目標を中心とする半径5メートルの円内に100発中50発の弾着が「期待できる」ということになります.
当然,数が小さいほうが能力が高いです.
参考:
最も高精度のICBMでは射程10,000kmでCEP約180m.
終末誘導装置付巡航ミサイルではCEP1~3m.
レーザ誘導爆弾ではCEP数十cm~数m程度
【珍説】
アメリカの属国になったイギリス 2003年7月29日
田中宇
ガーディアン紙の記事などによると,イギリス軍の潜水艦部隊はアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」を大々的に導入すべく改装を行っているが,トマホークはアメリカの許可なしには発射できない.
~中略~
トマホークは,地図とミサイル直下の実際の地形と照合して誘導するターコム(Tercom)と,GPS(衛星を使った位置測定システム)というアメリカの2つのシステムがないと飛ばせず,イギリスにとって対米従属を強いるミサイルとなっている.
【事実】
・・・あれ? イギリスは自前の偵察衛星を持っているのだから独自にデータを入力できる筈.
そもそも,トマホークの基本航法装置はTercom(地形等高線照合)とDsmac(デジタルマップ照合)であって,二つともそれぞれレーダー衛星と光学衛星からのデータを入力してやれば発射が出来る.
それにイギリスに供給された型はまだGPSが付いていなかった筈だし,GPS衛星からのデータ受信はアメリカから一々許可を得ずとも可能.
▼
イギリスの戦略原潜に搭載されているトライデントIIミサイルは,正確には英国の所有物ではなく,米国にある米と共同で管理しているミサイルプールから搭載し,ミサイルは米国がメンテナンスしています.
核弾頭は完全に英国製であり(設計には米の助けが入っているにしても),英国まで戻った後,
クールポートで英海軍によって「借りた」トライデントに取り付けられます.
英原潜に米軍人が乗り込むルールはありませんし,コントロールしているわけでもありません.
しかし,弾道弾に対する早期警戒システムや衛星は米のものであり,共同使用しているとはいうものの,
この点では米にコントロールされていると言えるかもしれません.
しかし,基本的にはブレア首相が先日英国の核戦力維持とそのためのミサイル改良について答弁した
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/4805768.stm
ように,英国は核ミサイル発射に際して他国の許可を得る必要はありません.
軍事板 ▲
▼ この田中氏が下敷きにしているガーディアンの記事
We are now a client state
Britain has lost its sovereignty to the United
States
David Leigh and Richard Norton-Taylor
Thursday July 17, 2003
や田中氏が言わんとしているのは,トマホークやトライデントといった兵器は米国の軍事技術に大きく依存しているということであって,これは事実として正しいと思います.
ただ,それを理由として,ガーディアンの記事や田中氏が言うように,英国は米国の属国に成り下がったと言えるのかというと,難しいと思います.
だいたいにして米国以外で,トマホークやトライデントを使えるのは英国だけですしね.
ないものねだり,贅沢な悩みという気もします.
これは補足部分と同じことですが,
「メインテナンスには米国の協力が必須である」
と
「発射には米国の許可が必要である」
は同値ではないです.
前者は実際の運用の話であって,後者は手続きの話です.
その点でも,ガーディアンの記事や田中氏の主張には違和感を感じます.
トライデントの発射には米国の許可は必要ではないというのが,英国防省の公式見解です.
以下は情報公開法に基づくQ&Aからの抜粋.
[quote]
Q2.英国政府による核使用に,米国政府は何らかの関与をしますか?
A2.いいえ.
ただし,NATOとして使用する場合はこの限りではありません.
米国を含むNATO同盟国には意見を表明するための手続きが定められています.
Q3.米国政府は英国による核使用を禁止したり拒否権を発動することはできますか?
A3.いいえ.
Q4.英国政府には核使用に際し米国政府に通告する義務がありますか?
A4.いいえ.ただし,A2にあるとおりNATOとしての核使用の場合,米国と相談することになります.
[/quote]
▲
【質問】
ロールス・ロイス社の原潜用原子炉製造部門について教えてください.
【回答】
ロールス・ロイス Rolls-Royce は,初の自国製原子炉を搭載した原潜である,ヴァリアント級攻撃原子力潜水艦の
PWR1 加圧水型原子炉を製造して以来,英国海軍に原子炉を供給し続けている.
原子炉部品の製造大手でもあり,部品製造・組立・試験施設を持つ.
2008年7月には,民生用原子炉市場参入を宣言し,UAEの中のアブダビ首長国の原子力計画支援等を進めており,また,仏アレバ社とも業務提携を始めている.
【参考ページ】
http://en.wikipedia.org/wiki/Valiant_class_submarine
http://en.wikipedia.org/wiki/Churchill_class_submarine
http://en.wikipedia.org/wiki/Swiftsure_class_submarine
http://en.wikipedia.org/wiki/Trafalgar_class_submarine
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2008/news1113-3.html
http://www.naval-technology.com/projects/astute/
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100731/mcb1007310508000-n2.htm
http://www.yorkshirejapan.com/news/65.html
http://www.jaif.or.jp/ja/joho/world_npp-doukou.pdf
【ぐんじさんぎょう】,2011/01/03 20:30
を加筆改修
【質問】
一般的に言って,他国への原発開発支援とはどんなもの?
【回答】
報道や,日本等の原発導入時の事例から拾える範囲では,
・原発建設のため計画立案
・原発導入に向けた人材育成や制度づくり
・高度な技術の確保のための支援
(信頼性,安全性,稼働率,経済性,運転性・保守性など)
といったところ.
そういった関係のソフトウェアやハードウェアの開発支援(ロールスロイス社の設備から推察するに,試験・検証など?)を行っていると思われる.
【参考ページ】
http://www.contactcentervietnam.com/ja/News/2010-09-15-00-53-32.html
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_31614
http://www.toyo-keizai.co.jp/news/general/2010/post_3989.php
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=01-07-05-03
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-04-01-01
【ぐんじさんぎょう】,2011/01/04 21:20
を加筆改修
上記の件,大体そのくらいに留めておくのが適切と愚考します.
追記しようと思えば山ほどですが,きりがないですし,分かりやすい一例としては十分ですので.
へぼ担当 in mixi,2011年01月03日 17:09
【質問】
英国の潜水艦救助システムについて教えてください.
【回答】
DSRV,深海潜水救助艇と呼ばれるものを発明したのはアメリカ人である.[1]
これは世界のどこへでも空輸されることが可能であり,一回で24人を救助する事が出来た.[1]
同じ頃,すなわち1980年代初期に英国人は,自国のある機材を転用することによってDSRVを開発することが良いと考え,それを実現した.[1]
彼らが転用しようとしたのは,北海油田の掘削リグのメンテナンスのためのダイバー輸送用の潜航艇だった.[1]
北海油田用潜航艇を開発運用していたのはヴィッカース・オセアニクス Vickers Oceanics だった.[2]
試作のLRZ[3]を経て,1号艇はLR2.[2]
183mの深海に既に200回以上も潜った実績があった.[2]
全長7m,全高2.5m,全幅3m.[2]
艇体は10cm厚のGRF(ガラス繊維強化プラスチック)[3]
365mまでの深海に潜航可能だった.[2]
2号艇がLR3.[2]
サイズはLR2よりも僅かに大きく,457mまで潜航可能.[2]
3隻目がLR4.[2]
フレッド・オルセン・オセアニクス A/S Fred Olsen Oceanics A/S という,ノルウェーの会社とヴィッカース・オセアニクスとの合弁会社によって建造されたもので,彼ら曰く「世界で最も先進的な潜水艇」.[2]
457mの深海へ,乗員3人とダイバー2人を送り込む事が出来た.[2]
このうち,潜水艦救助システムへと改造されたのはLR3で,その後,LR5に置き換えられた.[1]
これらの艇の艇底は遭難した潜水艦と結合させ,遭難潜水艦の人員を乗り移らせる事ができた.[1]
以下に,LR5の要目を掲げる.[4]
全長: 9.8 m
全幅: 3 m
全高(接続スカートを含まず): 2.75 m
全高(接続スカートと15°のウェッジを含む): 3.5 m
重量(接続スカートと15°のウェッジを含む): 21,300 kg
最大運用深度: 400 m
最大速度: 2kn(4km/h)
【参考ページ】
[1] http://www.thenakedscientists.com/HTML/content/interviews/interview/2042/
[2] http://www.swzonline.nl/system/files/archive//197807.pdf
[3] http://www.navy.gov.au/sites/default/files/documents/Navy_News-July-28-1978.pdf
[4] https://ja.wikipedia.org/wiki/LR5_%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6%E6%95%91%E5%8A%A9%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0
LR2
( http://www.swzonline.nl/system/files/archive//197807.pdf より引用)
LR3
(こちらより引用)
LR5
(こちらより引用)
【質問】
エコー級測量艇について3行前後で教えてください.
【回答】
港湾や河口など,近海用に建造された英海軍の測量艇であり,この同級3隻で近海調査隊が編成されていた.
木材と鋼材の複合船体であり,これは掃海艇ハム Ham 級やレイ Ley 級と基本的に同一のものだった.
そのため,1960年代後半には,ハム級の2隻 ポーダーハムとヤックスハムが,エコー級と同様の測量艇に改装されている.
1985年に全艇が売却された.
ちなみにエコー級の名は,2002年建造の測量船に受け継がれている.
HMS エコー (A70) 1958年9月12日就役,1985年売却
HMS エンタープライズ (A71) 1959~1985
HMS エゲリア (A72) 1959~1985年
【参考ページ】
http://en.wikipedia.org/wiki/Echo-class_survey_ship_(1957)
http://www.hmsgangestoterror.org/echo/hmsecho.htm
3隻まとめて建造中のエコー級
(こちらより引用)
【質問】
現在の英海軍の揚陸作戦構想はどんなものか?
【回答】
LPH オーシャン Ocean から空挺部隊がヘリで発進
↓
空挺部隊が橋頭堡確保
↓
LPD アルビオン Albion 級から地上部隊第一波が上陸
↓
海岸から視程外(およそ20浬以上)の沖合に待機していたラーグス・ベイ
Largs Bay 級 LSD からLCUとヘリとで第2波を揚陸
↓
海岸が確保されたところで同級は海岸へ接近,メキシフロート自走式ポンツーンで桟橋を設け,機械化歩兵部隊や重車輛などを揚陸
……という段取り.
なお,ユーゴ内戦へのNATO介入に際し,重装備や多数の兵員を輸送する能力に不足がある事を痛感したため,新型車両運搬船
Hurst Point 級RORO船6隻を,2002~2003年に就役させた.
これらは民間のAWRS社に就航し,25年間契約で英国防省にチャーターされている.
同省では他に3隻をチャーターしている.
詳しくは「世界の艦船」2006年3月号,p.76-77(岡部いさく著述)を参照されたし.
【質問】
英国海軍では酒が配給されていたそうだが?
【回答】
グロッグは配給酒.英国海軍の原動力で,1970年に廃止されるまで続いた伝統の酒である.水割りのラムのことを一般に指すが,適宜砂糖やレモンを加えていたようである.水とラムの混合比は2:1.
「パッサーズ・ラム(Pusser's Rum)」(注1)は英国海軍に納入されていたものが配給酒制度廃止で市場に出回ったもので,「1655年以来の伝統」が売り文句(注2)である.しかし,ラムが配給され始めたのは18世紀のことである.
折しもその時代,フランスとの戦争状態に入ったことで,それまで配給酒に使っていたブランデーの補給が出来なくなった.タイミング良くジャマイカを占領して,ラムに切り替えたところ,生のまま呑んで悪酔いする水兵が続出し,事故が増えた.
そこで1740年(注3)にエドワード・ヴァーノン中将が水割りにして配給したところ,それがなくなったので,水割りでの配給が一般的になったのである.
そして,このヴァーノン提督,トレードマークがグログラム(絹毛混紡の布)のボート用長マントで,「グロッグ親父(Old
Grog)」の通り名があった.このために,彼が発明した配給酒も「グロッグ」と呼ばれるようになったとのことである.いくらグロッグでも飲み過ぎればふらふらになる.その状態を指した言葉がグロッギー,日本語になまると「グロッキー」である.
注1,2:Pusser's Rumラベルより
注3:研究社英和大辞典第5版grogの項より
ちなみに一日の配給量は60mlほど.かならず水かお湯割りだそうな.
また,イギリス海軍はどこの国よりいち早く壊血病の対策として「ライム」を船に積んで遠征にでかけた.
後にそれをからかわれて「ライミー」などと呼ばれた.
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